20代が転職をする際に求める物とは?

2024-06-20 15:40:00

20代が転職活動で次の職場に求めるものは、単なる「待遇の良さ」だけではなく、働き方の柔軟性・成長機会・職場の人間関係など、複数の要素をバランスよく重視する傾向が見られる。経済環境の変化や価値観の多様化を背景に、20代の転職観は「安定と挑戦の両立」を志向している点が特徴的である。 まず最も大きな動機の一つが給与・待遇の改善である。リクルートやパーソル総合研究所などの調査によると、20代の転職理由の上位には「収入を上げたい」「努力が正当に評価される職場で働きたい」が常に挙がる。物価上昇や将来の生活設計への不安から、安定した収入を確保したいという意識は強い。また、昇給制度やボーナス体系など、長期的にキャリアと収入が連動する仕組みを求める傾向もみられる。単に「今の給与を上げたい」というより、「自分の成長に見合った報酬が得られる職場」を理想とする傾向が強い点が特徴的だ。 次に重視されるのが仕事内容ややりがいのある仕事である。20代はキャリアの初期段階にあたり、今後の方向性を模索する時期でもある。そのため「自分の興味・関心に合った仕事をしたい」「スキルを活かせる、もしくは新しい分野に挑戦したい」という自己実現的な動機が多い。特に20代後半になると、「ただの仕事」ではなく「成長を実感できる仕事」や「社会に貢献できる仕事」を求める声が増加する傾向がある。これは、若手世代にとって“働く目的”が生活維持だけでなく、自己成長や社会的意義にも向けられていることを示している。 一方で、働き方や環境の柔軟性も非常に重視されている。コロナ禍以降のテレワーク普及をきっかけに、「自分のライフスタイルに合った働き方ができるか」という観点が転職理由として定着した。具体的には、リモートワークやフレックスタイム制度、残業の少なさ、休日の取りやすさなど、ワークライフバランスを保てる環境を求める声が多い。特に20代の女性では「ライフイベントを見据えて柔軟に働ける職場」を重視する傾向があり、男性でも「趣味や副業との両立」を望む人が増えている。 これらの背景には、長時間労働や過剰な上下関係に対する拒否感があり、「精神的に健全に働ける環境」を求める意識が強まっている。 さらに、職場の人間関係や雰囲気も転職先選びの重要な要素となっている。多くの若手が「前職を辞めた理由」として「人間関係のストレス」を挙げており、転職先では風通しの良さや上司との相性、チームワークを重視する傾向が強い。特にZ世代を中心に、「フラットなコミュニケーション」「心理的安全性のある職場」を求める声が増加している。単に仲が良い職場というより、自分の意見を言いやすく、成長をサポートしてくれる組織文化が理想とされている。 また、成長機会・スキルアップの環境も20代の転職では欠かせないポイントである。多くの若手社員が、「今の職場ではスキルが伸びない」「キャリアの先が見えない」と感じたときに転職を考える。特に、教育・研修制度が整っている企業や、挑戦を後押しする社風は高く評価される傾向にある。20代は自分の市場価値を高めたいという意識が強く、「経験を積める環境」や「成長が評価される制度」を重視する。これは、“終身雇用”よりも“キャリアの自己責任”を前提とした考え方の広がりを反映している。 一方で、20代は「転職のしやすさ」を感じる一方で、企業の安定性や将来性にも敏感である。ベンチャーやスタートアップを志向する若者も多いが、経営が不安定な企業への不安や、「ブラック企業に転職したくない」という慎重さも強い。特に不況期や業界再編が進む近年では、「安心して長く働ける環境」を条件に挙げる人も増えている。つまり、20代は“チャレンジしたいが、リスクは抑えたい”という二面性を持っており、安定と挑戦のバランスを取れる職場が理想とされている。 最後に、20代が共通して求めるのは「納得感」である。給与、仕事内容、働き方、成長環境など、どの要素においても“自分で選び、納得して働けること”が最も重要視されている。情報化社会の中で転職先の実態を調べやすくなったこともあり、20代は企業の透明性を強く求めるようになった。入社前後のギャップを避けたいという心理が働いており、誠実でオープンな職場が好まれる傾向にある。 総じて、20代の転職活動は「収入・やりがい・環境・成長・安定」という五つの軸をどうバランスさせるかが鍵となる。かつてのように“有名企業に入ること”がゴールではなく、自分らしく働き続けられる環境を選ぶことこそが、20代の転職で最も求められている価値といえる。